第16回アンデルセン公園きりがみコンクール
入賞作品発表
第16回を迎えた「アンデルセン公園きりがみコンクール」には、小学生以下の部1,360点、中学生の部403点、一般の部324点、応募総数2,087点の作品が寄せられました。たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。今回も多くの地域から、力作揃いの素晴らしい作品が集まりました。
審査員
- 特別審査員|駐日デンマーク王国大使
- Jarl Frijs-Madsen(ヤール・ フリース=マスン)
- 審査員長|切り紙研究家/東京造形大学講師
- 下中菜穂
- 審査員|イラストレーター/多摩美術大学グラフィックデザイン学科准教授
- 高橋庸平
- 審査員|水彩画家/造形作家
- 平野ニーナ
アンデルセン公園きりがみ大賞
ちゃわんのような目の犬
アンデルセン童話:火打ち箱
高橋青生 (たかはし あおい)
アトリエホシガラ / 小3 ( 千葉県流山市 )
講評
ギョロリ。この犬と目があった途端、私も魔法にかかってしまったようです。木のウロに入り込んだ兵隊が、最初に出会ったのが「茶碗ような」目玉の犬。その目と視線を合わせた瞬間、そんな犬なんているはずない!などと思う間もなく、私たちはパーンと不思議な世界に引き込まれてしまします。そして次々と荒唐無稽な展開に身を委ねていくのです。あなたの犬の目玉も、そんな強い視線の力を持っています。(下中菜穂/審査員長)
大賞にふさわしい、堂々とした表現力が光る作品です。銅貨の入った箱の上に座る、目玉の大きさが茶碗ほどの犬が力強く描かれ、見る人を圧倒します。アンデルセンは犬の目の大きさにメタファー(隠喩)という技法を使い、その存在感を際立たせました。この作品では、その大きな目がツヤのある紙で強調されていて、犬の純真な心情まで伝わってきます。細部まで工夫が凝らされていて、とても魅力的です。(高橋庸平/審査員)
力作ですね!きらりと光る目、画面いっぱいの存在感カッティングも色選びも二重丸。ブラボー!(平野ニーナ/審査員)
アンデルセン公園子ども美術館賞
外から見えない幸せ
アンデルセン童話:父さんのすることはいつもよし
簾翔悟 (すだれ しょうご)
君津市立周西中学校 / 中2 ( 千葉県君津市 )
講評
この物語は日本の昔話の「わらしべ長者」と似ていますが、展開は全く逆。馬を売りに行ったお百姓は、さまざまなものと交換を続け最後に手にしたのは腐ったリンゴ。なんとまあ大損でないか?と思いきや、そのことを愉快だと喜びあう夫婦の姿に私達はハッとさせられるのです。腐ったリンゴを丁寧に美しいものとして描くことで、世間一般の価値観とは別の幸せの尺度があることに共感を寄せるあなたの思いが伝わってきました。(下中菜穂/審査員長)
傷んだリンゴがとても美しく表現されています。リンゴのシワの描き方には、20世紀初めのフランスで生まれた「キュビスム」という芸術運動の特徴に似た魅力を感じます。そして、タルの上に置かれたリンゴの断面は、金色に輝いています。その輝きには、タルの中の金貨よりも大切なものが詰まっているように思えます。見ていると「この幸せを大切にしたい」と感じさせてくれる作品です。(高橋庸平/審査員)
お父さんの腐ったリンゴがこんなに素敵なアートになってしまった!格好良すぎてしょ。素晴らしい!(平野ニーナ/審査員)
デンマーク大使賞
愛
アンデルセン童話:すずの兵隊
神白陸 (かじろ りく)
船橋市立古和釜中学校 / 中1 ( 千葉県船橋市 )
講評
錫の兵隊が心へと変わる姿は、勇気と忠誠が愛に昇華する瞬間を象徴し、印象的です。シンプルな切り絵の表現は、デンマークと日本の美意識を感じさせます。(ヤール・ フリース=マスン/駐日デンマーク王国大使)
物語のクライマックス。すずの兵隊がハートの形になった後の様子が見事に表現されています。背景の色紙を暖炉のレンガと同系色にすることで、無地でありながら空間の広がりが感じられ、大きな余白から部屋の寂しげな空気感が伝わってきます。また、シャープに切り抜かれたハートと、ちぎって表現された周囲の炭との対比も効果的です。作品全体から、愛を包み込むような温かみが感じられます。(高橋庸平/審査員)
オーデンセ市賞
マッチ売りの少女
アンデルセン童話:マッチ売りの少女
笹本陽子 (ささもと ようこ)
一般 ( 千葉県四街道市 )
講評
[訳文]この切り紙作品は、H.C. アンデルセンの作風と精神を見事に捉え、「マッチ売りの少女」の本質を優雅に表現しています。その構図は非常に洗練されており、一目で物語が伝わる分かりやすさも兼ね備えています。特に素晴らしいのは、物語の核心である「悲しみ」と「生の輝き」の両方を巧みに織り込んでいる点です。また、作品の縁を彩る流れるような曲線は、シンプルでありながら優雅な技法として、切り紙にさらなる生命感と躍動感を与えています。こうした理由から、この作品は「オーデンセ市賞」に選ばれました。
The paper cutout elegantly captures the essence of the fairy tale "The Little Match Girl" in the style and spirit of H.C. Andersen. The composition of the cutout is incredibly elegant while also being immediately understandable to the viewer. The artist's ability to incorporate all elements of the fairy tale, including both the sad and life-affirming parts that are so essential to the story, is very impressive. Likewise, the graceful curves of the image's edges are a fine touch; a technique that, in a simple yet elegant way, manages to give extra life and dynamism to the cutout. For these reasons, the cutout has been selected to receive the Odense City Prize.
Mads Runge
Head of development, H.C. Andersen’s House & Carl Nielsen Museum, Ph.d.
紙を折って切る。開くと現れる対称図形の美しさに、古より人は魅了されてきました。アンデルセンもその一人。彼の作品の多くにこの手法が使われています。この作品もすっきりとした構成でその魅力を引き出しています。人はまた、無心に切り紙をする行為の中に「祈り」を込めてきました。この作者も「マッチを擦って夢を見ることもできないであろう子供達に一日も早い平和を」という言葉を添えてくれました。1日も早くその祈りが届きますよう。(下中菜穂/審査員長)
アンデルセン博物館賞
ばらの讃美歌
アンデルセン童話:雪の女王
横田真澄 (よこた ますみ)
一般 ( 千葉県四街道市 )
講評
[訳文]この切り絵作品は、「雪の女王」が大きく、不気味に迫ってきます。その白い姿の下には、曲がりくねった道が描かれ、これから続く長く険しい旅路を示しています。道中、私たちは傷つき、引き裂かれるかもしれません。しかし、紙の繊細な線の中には、様々な顔や動きが浮かび上がり、そのすべてが恐ろしいわけではありません。混沌の中にあっても、大きな赤い心臓が力強く鼓動し、見る者に喜びと「善きものが存在する」という希望を抱かせます。また、一歩引いて作品全体を見ると、それ自体がひとつの大きな顔となり、こちらを見つめ返しているようにも感じられます。そしてシンプルで明快な青と白の色彩で仕上げられ、多様な技法が駆使されることで、独特の表現が生まれています。こうした理由から、この作品が選ばれました。
Something large and icy cold comes menacingly towards us in this paper cutout featuring the Snow Queen. The winding path beneath the white figure indicates that a long and perilous journey lies ahead. It will tear and prick us along the way. Several faces and movements emerge in the many lines of the paper cutout, and not all are frightening. In the midst of it all, a large red heart beats, filling the viewer with joy and belief that goodness exists amidst the chaos. Stepping back from the cutout, the entire figure can be seen as a large face looking back at you. The paper cutout is executed in simple, clear colors, blue and white, and many different techniques have been used to achieve the expression. Therefore, the cutout has been chosen.
Mads Runge
Head of development, H.C. Andersen’s House & Carl Nielsen Museum, Ph.d.
青いクレヨンによって生まれた独特の質感が、カイとゲルダの住む世界の空気感を見事に再現し、幻想的な雰囲気を際立たせています。さらに、画面の右下に刻まれたデンマークの詩人ハンス・アドルフ・ブロルソンによる賛美歌が「バラの花のように命には限りがあり、全てのものは成長し変化していく」という無常観を静かに語りかけます。詩的で余韻の残る、心に響く作品です。(高橋庸平/審査員)
ヴィレ・ヴァウ賞
泣いているアヒルの子
アンデルセン童話:みにくいアヒルの子
関戸ゆい (せきど ゆい)
取手市立取手東小学校 / 小1 ( 茨城県取手市 )
講評
[訳文]この作品は、モチーフやシンプルでグレーを基調とした色使いによって、「孤独によって自分が溶けていくような感覚」を見事に描き出しています。切り紙の空白部分には取り残されたような寂しさが漂い、それを埋めたいと思う気持ちは、まるでみにくいアヒルの子の心情と重なるかのようです。同時に、この切り絵は孤独の詩的な美しさをも優雅に表現しています。涙や羽が抽象的な造形の中に溶け込み、見る者それぞれが自身の物語や感情を重ね合わせることができるでしょう。選ばれた色合いは、この物語全体に流れる哀愁をより際立たせています。こうした要素が見事に調和したこの繊細でシンプルな作品に、「ヴィレ・ヴァウ賞」が贈られます。
The motif and the simple, mostly grayish colors finely illustrate how one can dissolve when feeling lonely. The sense of abandonment lingers in the empty parts of the paper, which, like the duckling, the viewer wishes to fill. At the same time, the cutout elegantly brings forth the poetry of loneliness. Tears and feathers blend with the otherwise abstract expression, allowing the viewer to project their own stories and emotions onto the image. The choice of colors beautifully underscores the melancholic expression that also permeates the fairy tale. Altogether, these elements mean that this fine, simple cutout is awarded the Ville Vau Prize.
Mads Runge
Head of development, H.C. Andersen’s House & Carl Nielsen Museum, Ph.d.
なんて、悲しいアヒルの子でしょう。そして愛おしい。手の中でそっと温めてあげたくなります。あなたもきっとこんな悲しい気持ちを知っているのでしょうね。だから、アヒルの子の悲しみに寄り添えるのだと思う。誰もが心の底に抱えている悲しみ。それに形を与えてくれたような気がします。それが優しさで包まれて、なんだかあたたかい気持ちになります。私の心の中にも、この小さなアヒルの子がすっかり住み着いてしまいました。(下中菜穂/審査員長)
我が生涯の物語賞
物語の一部
アンデルセン童話:すずの兵隊
趙鳴晧 (ちょう みんほう)
絵画サークル『宙』 / 小6 ( 千葉県船橋市 )
講評
[訳文]この切り紙は、まさに枠を超えた素晴らしいアイデアに満ちています。文字通り、そして比喩的にも枠から飛び出し、質感や色彩、影、輪郭を巧みに活かしながら、まるで初めて語られるかのように「錫の兵隊」の物語を描き出しています。入賞者のの方、おめでとうございます!惜しくも届かなかった作品も数多くあり、審査に関われたことを大変光栄に思います。心からの感謝をお伝えするとともに、応募された皆さんの素晴らしい才能と創造力に、深い敬意を表します。
Full of fantastic ideas, this illustration breaks out of its frame, literally and metaphorically. With texture, colour, shadows, and edges it tells the tin soldier’s story as if it was the first time.
Christian Benne
Hans Christian Andersen Priskomite
物語の展開を「本」という形で表現したのが素敵なアイデアですね。本の中には、たくさんの物語が詰まっています。ページをめくるごとに、さまざまなイメージがあふれてくるようです。よく見ないとわからないのですが、灰色のページには、無数の波のような横の切り込みが入っています。これは暗い溝に流れる水の表現でしょうか。紙の舟は本当に新聞紙でできていたかもしれませんね。(下中菜穂/審査員長)
日本デンマーク協会賞
愛と勇気の童話交響曲
アンデルセン童話:人魚姫、みにくいアヒルの子、親指姫
李祈樂 (CHI-LE, LEE)
一般 ( 台湾 )
講評
アンデルセンの夢の世界を大空と海への反映の中で綺麗に描いており、また「醜いアヒルの子」と白鳥の時を超えた対比も巧みです。色彩もカラフルで楽しく、子供たちに夢を与えるアンデルセンの世界を見事に描いた秀作です。(佐野利男/日本デンマーク協会会長)
なんと、台湾からの応募作品です。「切り紙コンクール」の広がりを感じます。作者は3つの物語のエッセンスを重ね「愛と勇気」を表現したのだといいます。アンデルセンの物語は世界中の人に愛される宝物なんだなあという思いを新たにしました。この作品は、カラフルであるだけでなく、紙の貼り方を工夫して立体的に仕上げています。切り紙の新しい可能性を感じさせてくれました。(下中菜穂/審査員長)
船橋市長賞
王様の王冠
アンデルセン童話:はだかの王様
保﨑一乃 (ほざき いちの)
一般 ( 静岡県静岡市 )
講評
王冠という王様の象徴の中に、あらゆる物語が織り込まれているのは実に見事です。技術的にも卓越しており、まさに圧巻の作品だと思います。(松戸徹/船橋市長)
子ども一人の言葉で民衆の意見が大きく変わる物語のクライマックス。その印象的な場面をモチーフに、アンデルセンらしい左右対称の切り紙手法で王冠がデザインされています。コミカルでありながら象徴的な造形は、物語の普遍的なメッセージを見事に表現しています。教訓は時代を超えて現代社会でも変わらずに生き続けます。真実を見極め、自分の意見を持つ勇気の大切さを伝えるモニュメントとしたくなるような作品です。(高橋庸平/審査員)
船橋市教育長賞
踊らされる少女
アンデルセン童話:赤い靴
小林隼 (こばやし しゅん)
船橋市立古和釜中学校 / 中3 ( 千葉県船橋市 )
講評
一見すると操り人形のように見えながらも、実は赤い靴が自らの意志で世界を広げようとする姿が、生き生きと描かれていて見事な作品です。(松本淳/船橋市教育長)
赤い靴の呪いを人形劇の操り人形と重ね合わせるアイデアは、ありそうでなかった独創的な発想です。幾何学的な画面の構成が、舞台の奥行きを感じさせるような空間表現として見事に機能し、物語の世界へと引き込む幻想的な雰囲気を生み出しています。特に目を引くのは、カーレンの姿と床に落ちた影の造形です。どちらのシルエット(輪郭)にも切り紙の面白さが活かされ、緻密で美しい表現となっています。(高橋庸平/審査員)
一般の部|優秀賞
泡になって消える人魚姫
アンデルセン童話:人魚姫
森下慧人 (もりした けいと)
ゆたかカレッジ川崎キャンパス / 一般 ( 神奈川県川崎市 )
講評
人魚姫が泡になって海に溶けていく瞬間の光景です。あえて青色の紙の地をそのまま海にして、夜空は濃い紫色の紙をちぎって貼り合わせています。質量のある人間界は人魚姫にとってはカラフルだけど、重くて夢破れた世界です。重さのない海の世界は、軽やかで自由ではあるけれど冷たくて色のない世界。そのコントラストが印象的です。このように、二つの世界をくっきりと分割して表現したのが面白い。(下中菜穂/審査員長)
一般の部|優良賞
なんだか楽しそうな音が聞こえる
アンデルセン童話:人魚姫
長谷川花音 (はせがわ かのん)
名古屋市立名東高等学校 / 一般 ( 愛知県名古屋市 )
講評
帆船のなんと堂々と素敵なこと!デザインも抜群だし色彩もお洒落です。(平野ニーナ/審査員)
一般の部|優良賞
紙ヤスリ
アンデルセン童話:赤い靴
陶國康子 (すえくに やすこ)
杉本絵画教室 / 一般 ( 兵庫県尼崎市 )
講評
ざらざらの表面、工業的なデザインの裏面。紙ヤスリという素材を使ったアイデアが面白い。マテリアルの面白さだけでなく、この素材からは木を擦る手触りや匂い立つ香りなどの記憶が想起されます。「木を削るように、まあるくやさしくけずられておどる」と作者のコメント。素材の記憶が作品のイメージの源泉になっているのですね。明るく愛らしい姿で微笑みながら次第に削られてしまう…それも怖いですね。(下中菜穂/審査員長)
一般の部|優良賞
peace of mind
アンデルセン童話:人魚姫
吉井康朗 (よしい やすろう)
一般 ( 奈良県橿原市 )
講評
ハサミが生み出す切り紙の輪郭はシャープになりがちですが、染め和紙を使うことでとても柔らかな印象になりました。人魚姫の叶わなかった想いに寄り添い包み込んで祝福するようです。「大人の自分の利害を越えて子らの平和、平安を願おう」と作者。静かな手仕事の時間は、物語の祈りに触発されて、今を生きる私達の世界への祈りへとつながったのではないでしょうか。見るものにもその気持ちが伝わる作品です。(下中菜穂/審査員長)
中学生の部|優秀賞
おや指ひめ
アンデルセン童話:親指姫
柏崎心羽 (かしわざき こはね)
船橋市立古和釜中学校 / 中3 ( 千葉県船橋市 )
講評
ワオ!びっくり!!まさに親指姫!こんなにみんなに近くにいるのね。アイディア最高!(平野ニーナ/審査員)
中学生の部|優良賞
だんろを見るゆきだるま
アンデルセン童話:雪だるま
角瀬龍音 (かくらい りゅうき)
船橋市立豊富中学校 / 中1 ( 千葉県船橋市 )
講評
雪だるまが犬に教わり、初めてストーブを目にする瞬間が描かれています。四角いスポットライトが当たった舞台のような空間、お屋敷の中を覗き込む雪だるまの顔が窓ガラスに映る演出。そして、窓枠で顔が隠れることで、思わせぶりな表情を引き出す巧妙な見せ方が印象的です。どれも映画や演劇を見ているかのようで、映像的な演出が見事に感じられ、心に残るシーンとなっています。(高橋庸平/審査員)
中学生の部|優良賞
物語の始まり
アンデルセン童話:人魚姫
永守真也 (ながもり まなや)
船橋市立古和釜中学校 / 中3 ( 千葉県船橋市 )
講評
嵐の海から王子を助けた人魚姫。それが物語の始まりです。水の世界でしか生きられない人魚姫の下半身は海の色に溶けるようにつながり、陸の世界でしか生きれれない王子は土色の砂浜にまぎれるよう。それでも二人の上半身は分かち難いひとつの塊として描かれています。抽象的なフォルムの中に、物語の展開を予感させ、広い余白も効果的で、一篇の詩のような作品です。(下中菜穂/審査員長)
中学生の部|優良賞
泡になった人魚
アンデルセン童話:人魚姫
髙山蓮 (たかやま れん)
船橋市立古和釜中学校 / 中2 ( 千葉県船橋市 )
講評
人魚が空気の精へと姿を変えていく様子が繊細に表現されています。泡を丸く切り抜いた紙で構成するアイデアが秀逸で、幻想的な雰囲気とともに命の儚さも伝わってきます。さらに、お日さまの方へ手を差し伸べる人魚姫が、生まれて初めて涙を流す瞬間。さまざまな青い紙を重ねることで、海中に差し込む光のゆらぎや奥行きが美しく表現されています。アンデルセンの言葉を深く読み取り、物語の情感を見事に映し出した作品です。(高橋庸平/審査員)
小学生以下の部|優秀賞
わらっている絵
アンデルセン童話:すずの兵隊
髙木絆光 (たかぎ ひかる)
松戸市立横須賀小学校 / 小2 ( 千葉県松戸市 )
講評
踊り子の人形を想っている表情でしょうか。それとも、紙の舟に乗せられて、怖くても堂々としている様子でしょうか。この兵隊の笑顔からは、さまざまな物語が感じられ、とても印象に残ります。さらに、軍帽や軍服、そして銃剣を持つ手など、細かいところまで丁寧に作られています。もし『しっかり者のすずの兵隊』の本を作るとしたら、その表紙にしたくなるような兵隊の肖像画です。(高橋庸平/審査員)
小学生以下の部|優良賞
かわいそうなアヒルの子
アンデルセン童話:みにくいアヒルの子
谷村莞司 (たにむら かんじ)
取手市立取手東小学校 / 小1 ( 茨城県取手市 )
講評
少ない表現でありながらアヒルの孤独な気持ちがとてもよく伝わってきます。(平野ニーナ/審査員)
小学生以下の部|優良賞
カエルがやって来ました
アンデルセン童話:親指姫
犬山誠二郎 (いぬやま せいじろう)
アトリエセラセラこども絵画教室 / 年中 ( 神奈川県横浜市 )
講評
物語が動き始める場面。親指姫を連れ去ろうとする母ガエルが現れるシーンです。夜の沼地からゆっくりと姿を現す瞬間でしょうか。丁寧に作られた吸盤状の指先や脚の形からは、地面をしっかりと踏みしめ、今にも動き出しそうな躍動感が伝わってきます。さらに、キラキラと輝く目やブツブツと湿った肌の質感が、さまざまな模様の紙を使うことで、とても効果的に表現されています。(高橋庸平/審査員)
小学生以下の部|優良賞
クリスマスの日
アンデルセン童話:もみの木
山崎結生 (やまざき ゆいな)
船橋市立宮本小学校 / 小3 ( 千葉県船橋市 )
講評
自分の運命を知らないまま、クリスマスの晩に立派に飾られたもみの木。この姿に憧れながらも、森から離れて旅に出ることの恐れも感じていたことでしょう。そんな複雑な気持ちを抱えながら、その一生で最も楽しい時を過ごしているもみの木が、まさに実際のクリスマスツリーのように華やかに飾られています。明るい色使いが、暖かく楽しいクリスマスの夜を思い起こさせます。(高橋庸平/審査員)
審査員特別賞
私のアンデルセン童話
アンデルセン童話:人魚姫、はだかの王様、赤い靴、みにくいアヒルの子、他
原秀子 (はら ひでこ)
一般 ( 神奈川県鎌倉市 )
講評
遊び心たっぷりの四ツ折りの切り紙作品、アンデルセンも大納得でしょう。4つのエピソードを違和感なく1つにまとめて見事!(平野ニーナ/審査員)

特別審査員
駐日デンマーク王国大使
Jarl Frijs-Madsen
(ヤール・ フリース=マスン)
外交・貿易等を中心にデンマークからの対外国関係に25年以上従事。デンマーク外務省で様々な役職を歴任した。 直近では、ニューヨークで総領事、ノルウェー・オランダ・カナダで大使を務め、2024年12月より現職。行政セクター以外に、民間でのコンサルティングや銀行業務の経験も有する。コペンハーゲン大学経済学修士。

審査員長
切り紙研究家/東京造形大学講師
下中菜穂
千葉県生まれ/江戸時代の『紋きり遊び』を通して「かたち」に込められた祖先の暮らしぶりや精神を紹介。「文様を暮らしの中で楽しむ」文化、手仕事を現代に蘇らせるべく、出版やワークショップ、展覧会などで活動。中国の農村、東北の「きりこ」などもフィールドワークし、世界や日本の今も活きている切り紙の文化を研究。著書に『紋切り型』のシリーズ(エクスプランテ)、『こども文様ずかん』(平凡社)、『切り紙もんきり遊び かたちを贈る』(宝島社)など他多数。

審査員
イラストレーター/多摩美術大学准教授
高橋庸平
千葉県生まれ/多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻修了、博士号取得
故・秋山孝氏に長年にわたり師事し、イラストレーターとしても国内外において数々の受賞歴がある。主な受賞にFUKUDAポスター大賞2005
最優秀賞、日本ブックデザイン賞2016ブックジャケット・文庫版部門 金の本賞、モスクワ国際グラフィックデザインビエンナーレ2016 Golden
Bee賞(ロシア)、グラフィスポスター年鑑2021 金賞(アメリカ) ほか

審査員
水彩画家/造形作家
平野ニーナ
デンマーク・コペンハーゲン出身/フランスではアルベルト・ジャコメッティーやシャガール、ミロなどの多くの有名な芸術家の取材に立ち会うなど恵まれた環境の中で育まれた豊かな感性に日本古来の美との出会いから新たに生まれた高い芸術的世界観を持ち合わせて、個展や地域の芸術普及を目的とした活動を若手作家とともに行っている。
作品の応募状況
応募の内訳(点数)
計 | |
---|---|
一般の部 | 324 |
中学生の部 | 403 |
小学生以下の部 | 1,360 |
総計 | 2,087 |
応募があった地域(32都道府県)
北海道・ 岩手県・ 宮城県・ 山形県・ 茨城県・ 栃木県・ 群馬県・ 埼玉県・ 東京都・ 神奈川県・ 新潟県・ 富山県・ 山梨県・ 長野県・ 岐阜県・ 静岡県・ 愛知県・ 三重県・ 滋賀県・ 京都府・ 大阪府・ 兵庫県・ 奈良県・ 鳥取県・ 岡山県・ 広島県・ 福岡県・ 熊本県・ 大分県・ 鹿児島県・ 沖縄県・ 千葉県 ( 千葉市・ 市川市・ 船橋市・ 松戸市・ 茂原市・ 成田市・ 習志野市・ 柏市・ 流山市・ 八千代市・ 我孫子市・ 鎌ヶ谷市・ 君津市・ 浦安市・ 四街道市・ 八街市・ 印西市・ 白井市・ 香取市・ 山武郡横芝光町・ )
第16回アンデルセン公園きりがみコンクール
「人魚姫」「裸の王様」などの童話で有名なデンマークの作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンが“切り紙”の名手だったことを知っていますか? 彼は子どもたちに童話を聞かせながらハサミを走らせ、ファンタジーあふれる素晴らしい作品を数多く残しました。紙とハサミがあれば、いつでもどこでも誰でも楽しめる“切り紙” 。あなたにしかつくれない「きりがみ」をお待ちしています。

募集について
テーマ
「アンデルセン童話」に関するもので、折り方や切り方を工夫し、創造的なもの
対象
子どもから子どもの心をもった大人まで
期間
2024年4月21日(日)〜2024年12月15日(日)<消印有効>
要項
当コンクールについて、詳しくは募集要項(PDF)をご覧ください。
※リンク先を任意の場所に保存し、お使いください。
※保存したファイルは、推奨環境(Adobe Acrobat
Reader)にてお使いください。
※お使いの環境によっては動作しない場合がございます。
賞<予定>
・アンデルセン公園きりがみ大賞:1点
副賞:デンマークへの旅「アンデルセンの足跡をたどる」1名様ご招待
・アンデルセン公園子ども美術館賞:1点
・デンマーク大使賞:1点
・オーデンセ市賞:1点
・アンデルセン博物館賞:1点
・ヴィレ・ヴァウ賞:1点
・我が生涯の物語賞:1点
・日本デンマーク協会賞:1点
・船橋市長賞:1点
・船橋市教育長賞:1点
・各部門賞
「一般の部、中学生の部、小学生以下の部」から各部門の、優秀賞:1点、優良賞:3点