木の温かさを感じて

この建物の窓枠や扉はほとんどが木製。北海道に生息するシウリザクラが使われています。木肌は緻密で加工性が高く、乾燥後は安定しているので、20年以上経っても狂わず細りもしていません。色も経年で赤みが深くなり風合いが出てきていますが、今では入手困難。大切に使いたいものです。ほとんど左官と木で仕上げられたこの建物。ほかにも木の見所があります。それは間具(まぐ)。「空間をつなぐ」意味から、デザインした遠藤さんが名付けました。木のアトリエには、階段や小部屋、ベンチなど、独立した家具でもなく、建築でもない…遊び心満載です。合板や集成材、プリント合板が多い昨今、各アトリエの展示棚は、1本の原木から必要な寸法を切り出した無垢材・松が使われています。化学物質とは無縁、天然木本来の風合いを持ち、温度や湿度を調整する働きもありますが、不十分な乾燥や加工を間違うと割れやヒビが生じます。手触りや重み、厚みを感じてみてください。

シウリザクラ・6月頃に白い花が穂状に咲く
天然木・松の無垢材が使われた展示棚
木のアトリエ・間具(まぐ)
column

自然のかたちを
建物に

昔からの日本の建物は自然と一体で美しい。今はコンクリートで造るので、木とか土などをうまく落とし込んでいかないと。建物はなるだけ見せない方が自然に溶け込むけれど、全部隠すのではなく、楽しさの演出もしなくては。ガラスの大屋根はサッシとガラスの中心を少しずらしたので、同じサイズのガラスはない。均一はツマラナイ。そうすると、ほら、翼を広げたようにのびやかになる。

「自然に均一や左右対称はない。みんな違ってイイんだ。」

建築家|池田正一さん

静岡出身。土地固有の風土や歴史に根ざした設計を目指す象設計集団に参加後、龍設計を主宰。子ども美術館は基本設計段階から、左官の久住さん、家具の遠藤さん、象設計集団で仕事を一緒にした仲間たちと協働して創り上げた。

変化する風景

子ども美術館は、橋を渡ることによって、活発に遊べるワンパク王国から、落ち着いた創作の場へと自然に入っていくように計画されています。館内も、回遊するごとに違った風景が楽しめるように設計が工夫されています。

橋を渡って別世界へワ~プ!
トンネル入って何があるのかな?
おや、天井から光。ここは地下だ。
右のアーチをくぐると大きな根っこ発見!
左のアーチをくぐると階段。上へ行ってみよう。
あっ、明るい!地上に出た~。
うわ~、下の階が全部見える。楽しそう。
あ~、向こうの森まで見えるぞ~。