第13回アンデルセン公園きりがみコンクール
入賞作品発表

第13回を迎えた「アンデルセン公園きりがみコンクール」には、小学生以下の部1,413点、中学生の部447点、一般の部142点、応募総数2,002点の作品が寄せられました。たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。今回も多くの地域から、力作揃いの素晴らしい作品が集まりました。

作品の応募と審査について

応募の内訳(点数)

千葉県 他県
船橋市
一般の部 12 23 107 142
中学生の部 257 86 104 447
小学生以下の部 306 951 156 1,413
総計 575 1,060 367 2,002

応募があった地域(30都道府県)

北海道・愛知県・愛媛県・茨城県・岡山県・岐阜県・宮崎県・宮城県・京都府・群馬県・広島県・香川県・埼玉県・三重県・山形県・山梨県・滋賀県・鹿児島県・神奈川県・青森県・静岡県・石川県・大阪府・長野県・東京都・奈良県・福岡県・福島県・兵庫県・千葉県(千葉市・市川市・船橋市・松戸市・成田市・佐倉市・東金市・柏市・市原市・八千代市・我孫子市・鎌ヶ谷市・浦安市・四街道市・八街市・印西市・白井市・南房総市・横芝光町)

審査員

下記の審査員によって選出された22点の作品には、アンデルセン公園きりがみ大賞をはじめ、各賞が贈られます。

特別審査員|駐日デンマーク王国大使
Peter Taksøe-Jensen(ピーター・タクソ-イェンセン)
審査員長|漫画家、京都精華大学マンガ学部名誉教授、子ども美術館名誉館長
牧野圭一
審査員|造形作家、切り紙研究家
下中菜穂
みえていない権力者
アンデルセン公園きりがみ大賞

みえていない権力者
松本 絹士郎

まほうの犬
アンデルセン公園子ども美術館賞

まほうの犬
米元 瞳二

あひると白鳥
デンマーク大使賞

あひると白鳥
鈴木 琉生

Shark
オーデンセ市賞

Shark
栗田 結衣

きれいなあひるの子
アンデルセン博物館賞

きれいなあひるの子
大場 空

もえるマッチ
ヴィレ・ヴァウ賞

もえるマッチ
西崎 友希那

お父っつぁんのすることはいつもいい
我が生涯の物語賞
(アンデルセン賞委員会)

お父っつぁんのすることはいつもいい
川村 洋子

ゲルダの闘い
日本デンマーク協会賞

ゲルダの闘い
ナヴィカス 祐子

虚栄と真実
船橋市長賞

虚栄と真実
古田 るり

大きないぬ
船橋市教育長賞

大きないぬ
齋藤 水希

あっという間に
一般の部|優秀賞

あっという間に
原 秀子

おやゆびひめ
一般の部|優良賞

おやゆびひめ
石井 富美枝

Tommelise2
一般の部|優良賞

Tommelise2
島袋 リカ

羨望(せんぼう)
一般の部|優良賞

羨望(せんぼう)
雨宮 光治

心残り
中学生の部|優秀賞

心残り
海野 八重

幻想
中学生の部|優良賞

幻想
遠藤 小晴

反対の姿
中学生の部|優良賞

反対の姿
齋藤 ゆうあ

本物って何だろう?
中学生の部|優良賞

本物って何だろう?
三浦 かんな

大きくなったもみの木
小学生以下の部|優秀賞

大きくなったもみの木
山本 陽菜

きえている人魚ひめ
小学生以下の部|優良賞

きえている人魚ひめ
川崎 愛結

なくもみの木
小学生以下の部|優良賞

なくもみの木
𠮷ノ薗 誠

人魚が王子をたすけた海
小学生以下の部|優良賞

人魚が王子をたすけた海
行待 実幸

アンデルセン公園きりがみ大賞/みえていない権力者

アンデルセン公園きりがみ大賞

みえていない権力者

松本 絹士郎   (まつもと けんしろう)

東海中学校 / 中1  ( 静岡県浜松市 )

講評

一連のお祝いの言葉の中で、繰り返し申し上げることになると思いますが、長く続いて評価を受けている「きりがみコンクール」が見事な作品群となって展示され、喜びあえる!東海中学校一年の松本絹士郎君の作品が、そのトップバッターとなるのは、象徴的です。素晴らしい「裸の王様」は一生の宝物!
牧野圭一

王様のゆがんだ表情が秀逸。黒い線による描写に、さまざまな色と形を重ねたのは、切り紙ならではの手法。それが生み出した不穏な空気は「批判や反対意見、真実を受け入れない」王様の心理を表現しています。また、王様の姿をトランプの絵札になぞらえることで、一見素晴らしく見えることの裏には、覆い隠された「真実」が潜んでいるかもしれないことを印象付けます。権力者の陥った暗い穴を痛烈に批判する若者らしい鋭角な批判精神に溢れた作品です。
下中菜穂

アンデルセン公園子ども美術館賞/まほうの犬

アンデルセン公園子ども美術館賞

まほうの犬

米元 瞳二   (よねもと とうじ)

藤心小学校 / 小2  ( 千葉県柏市 )

講評

二千点を超える応募作品の中から、米元瞳二(よねもととうじ)君の、まほうの犬を見つけた時は、たのしい表現に、選者一同笑ってしまうほどで、緊張の中にも「チョキチョキきりがみ」の楽しい空気が生まれました。また、小学二年の作品と知って、一層会場の空気がなごんだのも、米元君の“まほうの力”です。重ねて張り込んである色紙の半透明感と犬の動作、表情が“まほう”の力を発揮したのでしょう。瞳二まほうです。
牧野圭一

無造作に切り取ったかのように見える紙片。まるで、夢中で切り紙をした机の上に積もった紙のかけらの山の中から、むくむくと「魔法の犬」が現れたようです。切り紙をしていると、こんなふうに偶然見つけた「かたち」に導かれるように新しい「かたち」が現れることがあります。そういう瞬間がイキイキと表現されています。「かおのかたちをがんばった」という作者。この「顔」によって見事に魔法の犬に命が吹き込まれましたね。
下中菜穂

デンマーク大使賞/あひると白鳥

デンマーク大使賞

あひると白鳥

鈴木 琉生   (すずき るい)

習志野台第一小学校 / 小5  ( 千葉県船橋市 )

講評

小学5年生という年齢ながら白と黒を使い分けることで幼い頃の姿と美しい白鳥に成長した姿を対比させ、外見からは分からない内面の美しさをも表しているような本作品を選ばせて頂きました。本作品のテーマである「みにくいアヒルの子」の物語はどんな人でも生きていれば幸せになることができると伝えています。コロナ禍の私たちは様々なストレスと戦っていますが、この苦境を乗り越え輝かしい未来へと飛び立てるよう願っています。

駐日デンマーク王国大使
ピーター・タクソ-イェンセン

船橋市・習志野台一小学校五年の鈴木琉生(すずきるい)の作品は、「アヒルと白鳥」の題で、ストレートに理解できる作品だ。デンマークの『本家・アンデルセン公園ご招待』の特典があったら……。あらためて作品を見ると、アンデルセン先生の作品に一番近い『直球型』と見ることもできる。どんどん変化して複雑化して行く日本型でなく、『アンデルセン型』が守られているのかもしれない。
牧野圭一

オーデンセ市賞/Shark

オーデンセ市賞

Shark

栗田 結衣   (くりた ゆい)

鶴嶺中学校 / 中2  ( 神奈川県茅ヶ崎市 )

講評

[訳文]小さい人魚姫の物語のテーマである「憧憬」を映し出す奥行きを持つ画面構成がとても成功した美しい切り紙である。ここでは光と闇、白と黒という色の対極により遊び、異なる世界での人生を夢見る人魚姫の切ない憧憬を巧妙なニュアンスによって強調している。

学芸部オーデンセ博物館連合青少年課学芸員
リーネ・ボーア・ルンドゥ

[原文]Det er et velkomponeret og meget smukt klip som rummer en dybde, der formår at afspejle længslen i eventyret om den lille havfrue. Der bliver leget med modsætningerne mellem lys og mørke, mellem farver og sort/hvid. Nuancer som understreger havfruens drømme og længsel efter et andet liv

Line Borre Lundø
Museumsinspektør, Børn og Unge
Formidling og satsninger

何度も中学生の作品には目を惹かれます。デザインと言い、全体の構成力と言い、高いレベルの完成度に驚いています。この度の応募作品の中にはプロ作家、教師レベルの作家の方々が、楽しみながら参加し、運営側の参加者も気を引き締めて鑑賞しています。その雰囲気の中での選考です。栗田結衣(くりたゆい)さんは、自信をもってよろしいですね!『切り紙』の制約が、このような舞台にもさせているのです。
牧野圭一

あらかじめ着彩した紙を切り紙に使うことで、深い海底の情景を表現。抑えた色が光の届かない海底の冷たさを感じさせます。要所に白い紙が効果的に使われています。人魚姫の中にはかなさや美しさだけでなく「力強さ」を感じとったたのですね。確かに声を捨てても人間になろうとする勇気と激しさは彼女の魅力です。あなたがサメを好きなのもその力強さに惹かれるからなのですね。
下中菜穂

アンデルセン博物館賞/きれいなあひるの子

アンデルセン博物館賞

きれいなあひるの子

大場 空   (おおば そら)

習志野台第一小学校 / 小3  ( 千葉県船橋市 )

講評

[訳文]アヒルの子の様々な感情を美しく表現している。同時にこの切り絵は鑑賞者自身のストーリーや解釈を受け入れる。物語を表すのみでなく鑑賞者に扉を開き働きかける作品である。

アンデルセン博物館/青少年部学芸員
メッテ・クロンボー・ヴェデル・キレリック

[原文]Det er en smuk skildring af ællingen og dens mange følelser. Samtidig er det et billede, som giver plads til beskuerens egne historier og tolkninger. Et billede, der ikke kun skildrer, men åbner op

Mette Kronborg Vedel Kiilerich
Museumsinspektør i Børn og Unge, H.C. Andersens Hus

『ボクはきれいなあひるの子。小学校三年生です。どう?きれいでしょう!?』と胸を張っている、大場空くんの姿と声が作品に重なって見えています。小三らしい発想と、アヒルの形、表情がピッタリ!合っていますね。大場空君も名前に負けない、青空のような明るい性格の少年でしょう。日本には、すばらしい色紙があってよかったですね!きっとお母様のご指導も、空君にぴったりの、おおらかな空気の中にあるのだと想像!
牧野圭一

ヴィレ・ヴァウ賞/もえるマッチ

ヴィレ・ヴァウ賞

もえるマッチ

西崎 友希那   (にしざき ゆきな)

神戸鹿の子幼稚園 / 年少  ( 兵庫県神戸市 )

講評

[訳文]趣向を凝らした美しい切り絵。マッチ売りの少女の一コマの解釈で遊んでいる。燃えているマッチとあかりににズームインし、他の次元の世界の入り口となる金色の門を作る。この切り絵は自身の想像の力によって暖かさと愛情を夢見る幼い少女のこの感傷に訴える童話を美しく解釈している。色彩はドラマチックで暗闇の中の明かりを示すコントラストに満ちている。画面構成は的確で作者の意図との調和が取れている。

アンデルセン博物館/子供の世界ヴィレ・ヴァウ/ アーティスティック・マネージャー
リケ・ヤーン・スヴィンディング

[原文]Et smukt og anderledes klip, der leger med perspektivet i historien om Den lille pige med svovlstikkerne.Der zoomes helt ind på den brændende tændstik og lyset derfra danner en gylden portal indtil en anden verden. En smuk fortolkning af et melankolsk eventyr om en lille pige, der må drømme sig til varme og kærlighed vha. hendes forestillingskraft.Farverne er dramatiske og kontrastfyldte – lyset overfor mørket. Kompositionen er præcis og velafstemt.

Rikke Jahn Svinding
Formidlingsleder, Ville Vau - H.C. Andersens Hus / Artistic Manager Ville Vau.

さまざまなものが自動化する世の中で、マッチを擦ったことのない子供が増えています。マッチ売りの少女が凍える手でシュッと擦る一本のマッチ。その中にさまざまなものが見える。マッチを擦るという体験を抜きにして、この物語の核になっているこの瞬間を理解することはできないでしょう。この切り紙の作者は、きっと実際の小さな炎の揺めきを知っているのですね。さまざまな形が煌めく瞬間を。
下中菜穂

我が生涯の物語賞<br />
(アンデルセン賞委員会)/お父っつぁんのすることはいつもいい

我が生涯の物語賞
(アンデルセン賞委員会)

お父っつぁんのすることはいつもいい

川村 洋子   (かわむら ようこ)

一般  ( 千葉県船橋市 )

講評

[訳文]この作品は、力強いビジュアルで、愛と温もりを感じさせます。彼らの日々の出来事に漂うものは、お互いに対する強烈な愛です。また、物語の明るい面を見るか、暗い面を見るか、見る者に判断を委ねるような二面性のある考え方を示しています。

アンデルセン賞委員会
メッテ・ゲンツ

[原文]It is displaying so much love and warmth with a strong visual touch. Their love for one another is intense, while their thoughts are hovering on the days events. It also display a duality in mindset leaving the spectator to decide whether you see the bright or the dark side of the story.

Mette Genz
H.C.Andersen Priskomite

川村洋子さんのメッセージは、何とすばらしい『伝言』でしょうか!その作品世界と合わせ、二千人を超える応募者の代表!!と申して過言ではありません。それが千葉県船橋市在住の方と知れば、なおさらに、心を躍らせてくれるのです。住む地域を愛し、十分に満足なさっていることが大海の大波のように、繰り返して来ますね!愛知県豊橋市から移って来て、もう半世紀になる牧野にも“タカラモノ”であり続けます。
牧野圭一

日本デンマーク協会賞/ゲルダの闘い

日本デンマーク協会賞

ゲルダの闘い

ナヴィカス 祐子   (なびかす ゆうこ)

一般  ( 神奈川県逗子市 )

講評

少し怖い白色な描写の中にも暖色の人物を配置し、背景の青と相まって見事な配色で見る者を惹きつけ魅力がある秀作である。

日本デンマーク協会会長
佐野利男

お名前とメッセージから、国際結婚をされたお母様と拝察。この企画の特異性を体現する作者の登場ですね。切り紙の陰影や和紙の使い方、顔や指先の切り口から、プロ作家としてのお仕事もなさっている?と勝手に深読み。牧野も、海老川十三橋のマンガ彫刻像など“異分野侵入”を楽しんでおりますので、『ああ!そういう時代になったんだ!?』と我田引水。ナヴィカス祐子さんの、ますますのご活躍をご期待申し上げます。
牧野圭一

船橋市長賞/虚栄と真実

船橋市長賞

虚栄と真実

古田 るり   (ふるた るり)

愛知県立国府高等学校 / 一般  ( 愛知県岡崎市 )

講評

中学生の力量に注目していると書いてきたが、高校生になると、さらに充実した作品が目立って来ることを力説したい。愛知県立国府高等学校、古田るりさんの『虚栄と真実』には、そのすべてが示されている。紙に描かれたステンドガラスが、鉄骨の重量感まで表現していることに注目したい。高校生となれば将来の方向を定める時期と重なるが、そのすべての資質が現れた一点と、高く評価したい。
牧野圭一

虚栄と真実。二つの世界が表裏一体のものとして描かれています。同じように見えて、目を凝らすとどこかが違う。否、目を凝らさなければその違いに気がつくことはできない。一見同じように見えて周到に違いが隠された緻密な図柄はそのことを端的に表現しています。私達も目を凝らし、裸の王様を見分ける目を!
下中菜穂

船橋市教育長賞/大きないぬ

船橋市教育長賞

大きないぬ

齋藤 水希   (さいとう みずき)

宮本小学校 / 小3  ( 千葉県船橋市 )

講評

「火打ち箱」という今はすっかり暮らしの中から消え失せた道具の上に、茶碗や水車や円塔ほどの大きな目玉の犬がいる!この奇想天外な出だしから、すっかり不思議な物語の世界の虜になる。いったいどんな犬なんだろう?茶色の濃淡のかけらが散りばめられた画面の中で、大きな目玉がぎろりとこちらを見ている。見る人を大きな犬のいる世界への入り口に誘い込む作品です。
下中菜穂

一般の部|優秀賞/あっという間に

一般の部|優秀賞

あっという間に

原 秀子   (はら ひでこ)

一般  ( 神奈川県鎌倉市 )

講評

写真や包み紙など様々な印刷物から切り抜かれた大小様々な丸い形。そのニュアンスを生かして不思議な深海魚のような魚を造形しました。自然物も人工物もあらゆるものを飲みこむ怪魚。そんな存在が水底に潜んでいることに想像力を掻き立てられます。身の回りにある紙という素材を存分に活かして楽しんでいる作品ですね。
下中菜穂

一般の部|優良賞/おやゆびひめ

一般の部|優良賞

おやゆびひめ

石井 富美枝   (いしい ふみえ)

一般  ( 千葉県東金市 )

講評

裸の王様とおやゆび姫は、アンデルセン童話の中でも特に人気があるようですね。切り紙作品の題材としても、注目度が高いようです。かえるさんは、姫にけんめいに語り掛けても、姫の方はめいわくそう?岸の野草も水中の生物も、二人の主役を引き立てています。そのバランスと表現が、石井さんの物語世界にやさしく招き入れてくれます。お子さんへの読み聞かせもきっと、お上手であろうと想像しております。
牧野圭一

一般の部|優良賞/Tommelise2

一般の部|優良賞

Tommelise2

島袋 リカ   (しまぶくろ りか)

一般  ( 東京都東久留米市 )

講評

レースで編み上げられたような物語世界。優美な曲線によってツバメや天使、草花などが表現され、軽やかな音楽が聞こえてくるようです。親指姫の印象的なシーンが織り込まれているので、それを読み解くように楽しめます。中央の宝珠の形の部分と取り囲むような左右対称の部分の取り合わせが、大きな花束のようにも見えます。物語の花束ですね!
下中菜穂

一般の部|優良賞/羨望(せんぼう)

一般の部|優良賞

羨望(せんぼう)

雨宮 光治   (あめみや みつはる)

一般  ( 山梨県笛吹市 )

講評

この重たい色の重なりはなんだろう。目を凝らしていくと、アヒルの子の中に芽生えた羨望が、心の中でもこもこと不気味に膨れ上がるさまが、抽象的な色や形として表現されているのが見えてきます。「愛を受けられないせつなさと、空はばたく美しい鳥へのうらやましさ」を表現したと作者。それは私達の誰もが経験したことがある心象風景なのかもしれません。切り紙の迷いのないラインも魅力的です。
下中菜穂

中学生の部|優秀賞/心残り

中学生の部|優秀賞

心残り

海野 八重   (うんの やえ)

南毛利中学校 / 中1  ( 神奈川県厚木市 )

講評

なんだろう、目が離せない。心を残しながら泡となり、沈んでいく人魚姫。燃えるような赤い髪、黒い顔。冷たく暗い深海で妖しく発光するような光景が心に焼きつく。私も人魚姫と一緒に深い海に沈んでいくような気持ちになります。「どこか心残りがあるように思ったので、それを全力で表現しました」という作者のコメントを読んで、なるほど。「全力」で人魚姫の心に寄り添って制作したのですね。あなたの「全力」に心動かされました。
下中菜穂

中学生の部|優良賞/幻想

中学生の部|優良賞

幻想

遠藤 小晴   (えんどう こはる)

豊崎中学校 / 中2  ( 大阪府大阪市 )

講評

今回、中学生作品の質が特に優れていると感じていたが、マッチ売りの少女“感性”に視点を置いた発想と表現が、白色を基調に構成され、『マッチ売りの少女』の作品を類型化せず、『遠藤小晴マッチ売り』として、新鮮さを打ち出しています。アンデルセン先生も、『オヤオヤ』と身を乗り出してご覧くださったと感じています。船橋アンデルセン公園の像の前で、いつか、『小晴マッチ売り』入賞の報告をしたいですね。
牧野圭一

中学生の部|優良賞/反対の姿

中学生の部|優良賞

反対の姿

齋藤 ゆうあ   (さいとう ゆうあ)

川俣中学校 / 中1  ( 福島県伊達郡川俣町 )

講評

切り紙の特徴をうまく使った達者な作品です。ネガポジのように反転する情景を描き分けました。物語の舞台がさまざまな動物が暮らす農村であること、それが動物たちの目線で描かれていますね。物語では描かれていないそこでの暮らしが見えてくる、想像が広がる作品です。
下中菜穂

中学生の部|優良賞/本物って何だろう?

中学生の部|優良賞

本物って何だろう?

三浦 かんな   (みうら かんな)

アトリエ88 / 中1  ( 北海道下川町 )

講評

「本物って何だろう?」この「問い」の真っすぐな眼差しがまぶしい。作り物の歌う音符は固く生真面目で、本物の音符は楽しげに踊っています。そんなところにも気持ちを込めました。本物と作り物のナイチンゲールの物語。これは現代の私たちの物語です。本物そっくり(あるいはそれ以上と思わせる)映像や音楽、バーチャルなものに囲まれて暮らす私達。これは私達が何度でも反芻しなければならない「問い」です。
下中菜穂

小学生以下の部|優秀賞/大きくなったもみの木

小学生以下の部|優秀賞

大きくなったもみの木

山本 陽菜   (やまもと ひな)

宮本小学校 / 小3  ( 千葉県船橋市 )

講評

丹念に切ぬかれた「雪つぶ」が、ひとつひとつ丁寧に貼られています。すごいなあ。息をつめて手元に集中する姿が目に浮かぶようです。そういう時間が作品にはちゃんと刻まれるものなんですね。しんしんと降る雪の重さ、雪の日の湿った空気が感じられます。その中で立ち尽くすもみの木の風景が目に浮かびます。
下中菜穂

小学生以下の部|優良賞/きえている人魚ひめ

小学生以下の部|優良賞

きえている人魚ひめ

川崎 愛結   (かわさき あむ)

四街道小学校 / 小2  ( 千葉県四街道市 )

講評

不思議な形が並んでいます。何だろう?と見つめていると、中央の黒い形が、泡となって消えかかっている人魚姫だということに気づいて、ハッとする。そうか、横に寝ているのは王子。記号がくるりと反転して物語のかけらが見える不思議な瞬間を味わいました。あなたの心に刻まれた場面の緊張感が伝わってきます。
下中菜穂

小学生以下の部|優良賞/なくもみの木

小学生以下の部|優良賞

なくもみの木

𠮷ノ薗 誠   (よしのその まこと)

千葉日本大学第一小学校 / 小5  ( 千葉県船橋市 )

講評

小さなもみの木の周りには、お日さまやお月さまの光に満ち、バラ色の雲が流れ、気持ちのいい風が吹いているのに、ちっとも嬉しくありません。もみの木を飛び越えた野うさぎも、一緒に遊びたかったのかもしれませんね。そんなことに気がつかず、ただただ大きくなることを望んだもみの木。実はとっても幸せだったもみの木の姿がイキイキと表現できました。実生のもみの若木の姿も丁寧に本物のように描けました。
下中菜穂

小学生以下の部|優良賞/人魚が王子をたすけた海

小学生以下の部|優良賞

人魚が王子をたすけた海

行待 実幸   (ゆきまち みさき)

宮本小学校 / 小3  ( 千葉県船橋市 )

講評

中学生だけではありません。宮本小学校三年生の行待実幸(ゆきまちみさき)さんの作品、『人魚が王子をたすけた海』も素晴らしいです。東京湾に注ぐ海老川は、市中を巡って世界の港とも繋がっているのです。大勢の漁師さんも働いており、市場があって市民の食卓を満たすだけの魚介類を、水揚げしています。大きな都市にもなった船橋市を知っていただくためにも、実幸さんたちの力作や勉強は心強いですね。
牧野圭一

人魚姫と王子様、カラフルなさまざまなものたちが渦巻くように配されています。水の中の世界で身体がゆらゆらと浮いているような心地よさ。なんだかずっと見ていたくなります。こんな幸せな世界にずっといられればよかったのにね。海は暗く寂しいところではなく、こんなふうに美しく楽しい場所だった。そこを捨てて陸に上がった人魚姫の決断の強さを思います。
下中菜穂

Peter Taksøe-Jensen

特別審査員
駐日デンマーク王国大使

Peter Taksøe-Jensen
(ピーター・タクソ-イェンセン)

略歴:1986-1987 デンマーク法務省課長、1988-1989 デンマーク外務省課長、1989-1992 駐オーストリアデンマーク王国大使館一等書記官、1992-1995 デンマーク外務省安全保障政策課課長、1995-1999 欧州連合デンマーク政府代表部部長、1999 欧州連合デンマーク政府代表部参事官、1999-2003 デンマーク外務省法務局課長、2003-2008 デンマーク外務省法務局長、2008-2010 国連本部法務局次長、2010-2015 駐米デンマーク王国大使、2015-2019 駐インドデンマーク王国大使(ブータン、モルディブ、スリランカ、ネパール兼任)2019年9月より現職
その他実績:1999-2008 EU法、EUの政策・交渉及びEUの手続きや技術的事項について講義、2002-2003 デンマーク文化省公文書保管法委員会委員、2004-2008 デンマーク法務省司法委員会委員、2000-2007 デンマーク政府赤十字委員会副委員長、2007-2008 デンマーク政府赤十字委員会委員長、2010-2015 米国デンマークビジネス・カウンシル会長、2010-2015 米国トレード・カウンシル会長、2015- 南アジアトレード・カウンシル会長、2016 「デンマーク外交と防衛政策の推移~デンマークの外交及び安全保障政策~」報告書統括、2016-2018 ハーグ常設仲裁裁判所(PCA)によりオーストラリア・東ティモール間の海洋境界線調停委員会委員長に任命
受章:ダンネブロ騎士勲章3等級(Knight 1st Class)

牧野圭一

審査員長
漫画家、京都精華大学マンガ学部名誉教授、子ども美術館名誉館長

牧野圭一

1937年、愛知県生まれ。漫画家。1966年、近藤日出造氏に師事。1976年から約15年間読売新聞に政治漫画を連載。京都精華大学マンガ学部学部長などを歴任。1967年第13回文芸春秋漫画賞受賞、イタリア国際漫画サロン「パオロ・エミリオ・タピアニ賞」、1979年トルコ漫画賞「セブル賞」、1984年イタリアアンコーナースポーツマンガ展「国務大臣賞」など数々の受賞歴がある。作品集として『牧野圭一漫画集』第1~5巻(マキノプロダクション)、養老孟司との対談『マンガをもっと読みなさい』(晃洋書房)、NHKラジオ講座テキスト『“感覚的”マンガ論』(NHK出版)など著書多数。現在、子ども美術館名誉館長、京都精華大学名誉教授、京都国際マンガミュージアム国際マンガ研究センター長、ユーモア発明クラブ会長、社団法人日本漫画家協会理事など。

下中菜穂

審査員
造形作家、切り紙研究家

下中菜穂

千葉県生まれ。造形作家、もんきり研究家。東京造形大学講師。江戸時代の『紋きり遊び』を通して「かたち」に込められた祖先  の暮らしぶりや精神を紹介。「文様を暮らしの中で楽しむ」文化、手仕事を現代に蘇らせるべく、出版やワークショップ、展覧会などで活動。中国の農村、東北の「きりこ」などもフィールドワークし、世界や日本の今も活きている切り紙の文化を研究。著書に『紋切り型』のシリーズ(エクスプランテ)、『こども文様ずかん』(平凡社)、『切り紙もんきり遊び かたちを贈る』(宝島社)など他多数。

第13回アンデルセン公園きりがみコンクール

「人魚姫」「裸の王様」などの童話で有名なデンマークの作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンが“切り紙”の名手だったことを知っていますか? 彼は子どもたちに童話を聞かせながらハサミを走らせ、ファンタジーあふれる素晴らしい作品を数多く残しました。紙とハサミがあれば、いつでもどこでも誰でも楽しめる“切り紙” 。あなたにしかつくれない「きりがみ」をお待ちしています。

第13回アンデルセン公園きりがみコンクール

募集について

テーマ

「アンデルセン童話」に関するもので、折り方や切り方を工夫し、創造的なもの

対象

子どもから子どもの心をもった大人まで

期間

2021年4月25日(日)〜2021年12月28日(火)<当日必着>

要項

当コンクールについて、詳しくは募集要項(PDF)をご覧ください。

募集要項 

<予定>

・アンデルセン公園きりがみ大賞:1点
副賞:デンマークへの旅「アンデルセンの足跡をたどる」1名様ご招待
・アンデルセン公園子ども美術館賞:1点
・デンマーク大使賞:1点
・オーデンセ市賞:1点
・アンデルセン博物館賞:1点
・ティンダーボックス賞:1点
・アンデルセン賞委員会賞:1点
・日本デンマーク協会賞:1点
・船橋市長賞:1点
・船橋市教育長賞:1点
・各部門賞
「一般の部、中学生の部、小学生以下の部」から各部門の、優秀賞:1点、優良賞:3点